2018/09/26 グリーンピース声明:パーム油による森林破壊をモラトリアムではなく、禁止に ーーインドネシア大統領、今後3年間の新規パーム油に関連する伐採権の一部を凍結

プレスリリース - 2018-09-26
【ジャカルタ】国際環境NGOグリーンピース・東南アジアは、9月21日(現地時間)、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領が今後3年間、同国で新規のパーム油に関連する伐採権の付与を部分的に凍結したことを受け、下記の声明を発表しました(注1)。今回のモラトリアム(一時停止)は、同国の環境林業省が管理する土地にのみ適用され、地方政府が管理する土地や既存のパーム油のための伐採権所有地にある森林には適用されません。これは、何百万ヘクタールもの熱帯雨林と泥炭地は保護されないことを意味します。

グリーンピース・東南アジアの森林キャンペーナーアリー・ロンパス

「ジョコ・ウィドド大統領の発表は、一歩前進した内容ですが、矛盾と抜け穴によって損なわれています。 その発表はあくまで一時的なもので、何百万ヘクタールもの森林が保護されておらず、罰金も設けられていません。 インドネシアのパーム油産業が抱える深刻な信用問題は、既存の伐採権を含めた森林破壊の恒久的な禁止によって回復のチャンスがあります

今回の政府の発表は、グリーンピースの国際的な調査(注2)が、25のパーム油生産者による2015年以降の13万ヘクタールの熱帯雨林破壊を指摘した翌日に行われました。調査では、森林伐採、無許可の開発、保護区内でのプランテーション開発、土地開墾と関連する森林火災を明らかにしています。

政府の管理下にある土地フォレストエステートにおけるパーム油のための森林伐採権の新規割り当てを防ぐ3年間のモラトリアムは、多くの弱点があります。
・地方政府の管理下にある自然林のうち、何百万ヘクタールにも及ぶ伐採権の新規 割り当てを防げるものではない。
・既存の伐採権を利用する企業の森林破壊や、泥炭地開発を防げるものではない(注3)。
・政府機関や地元の職員に法的拘束力を持たない大統領命令の形を取っている。
・遵守しない者への制裁を含んでいない。

新しいパーム油のモラトリアムは、インドネシア政府が報告書で述べている内容「計画的な森林伐採は、財政的利益をもたらす場合に望ましい」と対立しています(注4)。農業改革(TORA)と土地交換プログラムを通じて、インドネシア政府は、植林や農業開発のために、まだ森林が多く残っている新しい土地の割り当てを継続しています。 これには、パプア州の未開拓地にある50万ヘクタールの森林の農業転用も含まれます(注5)。

注1)パーム油プランテーション許可の延期・評価とプランテーションの生産性向上に関するインドネシア大統領命令 https://assets.documentcloud.org/documents/4910673/Inpres-Moratorium-Sawit.pdf
注2)レポート 日本語サマリーhttp://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/Final_Countdown.pdf
注3)グリーンピース調査で伐採権所有地に約400万ヘクタールの森林が存在し、その半分近くがパプア州と西パプア州に位置する。
注4)報告書「State of Indonesia’s forest 2018」97ページ目http://www.menlhk.go.id/downlot.php?file=the_state_Indonesia_forests_2018_Book.pdf
注5)中央政府のパプア州・西パプア州開発計画では、2018年から2019年にかけて55万ヘクタールの森林の農地転用が目指されている。Rencana Aksi Inpres 9/2017’ Bappenas 2018, p.125, Table 4.6 point 17; and p. 144, Table 4.7 point 15. 

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