こんばんは。海洋生態系担当の岡田幸子です。
私はいま、マニラで12月3日から始まった中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合に、グリーンピース・東南アジアのスタッフと一緒にオブザーバーとして参加しています。
写真1(年次会合の様子)
中西部太平洋で世界のマグロ類の65%がとられている
WCPFCとは中西部太平洋にいるマグロなどの魚に関して取り決めを行う国際会議ですが、世界のマグロの総漁獲量の65%は、この中西部太平洋で獲られているのです。なので、この中西部太平洋でマグロをどのように管理していくのかが、いかに大切な事か分かってもらえると思います。
マグロをはじめ、私たちの海にいる魚の数は無限ではありません。みんなが好きなだけ獲ったりすると、なくなってしまう可能性があります。それに魚の群れを探知する最新の技術や大きい漁船を持っている国だけがこぞって獲ってしまっては、小さな島国などから食料や経済の源としての魚を奪いとってしまう事になりかねません。こういった事態にならないように、漁獲に関しきちんとした管理方法を決めなくてはなりません。
写真2(海で泳ぐキハダマグロ)
今年の会合の注目ポイント!
WCPFCでは、日本でもお刺身などでスーパーに並ぶ事の多いメバチマグロ、ツナ缶の原材料であるキハダマグロやカツオといった「熱帯マグロ」を保全するための管理ルールがあります。ですが今ある管理ルールは、今年の終わりまでしか有効ではないのです。
今回の第14回年次会合では、来年以降の管理ルールを決め直さなければいけません。特に人工的に魚を集める装置(FADs)に関する規制、はえ縄漁における洋上転載(漁獲した魚を海の上で運搬船に移し替える行為)や監視員の乗船率の強化など、どのような取り決めが採択されるのかが注目ポイントです。
写真3(巻き網漁で獲られたキハダマグロの幼魚)
また、ブログ愛読者はご存知かもしれませんが、今年夏に釜山で開かれた北小委員会で決まった太平洋クロマグロに関する長期資源回復計画案を年次会合に提出し採択されるかと言う点も見逃せないポイントです。
グリーンピースは、本年次会合に先立って保全管理ルールに求める項目をWCPFCに提出しました。詳しくはこちら。
会場に海のスーパーヒーロー現る!
年次会合が始まった3日の日曜日には、海のスーパーヒーローに扮したグリーンピーススタッフがパフォーマンスを行いました。
「マグロの資源を守るために、もっと管理ルールを強化しようよ!各加盟国の代表は、そのためのリーダーシップをとってヒーローになろうよ!」と呼びかけました。
写真4(海を守るスーパーヒーロー達)
最新の資源評価によると、主要なマグロの資源は乱獲状態にはない、もしくは、過剰に漁獲されていない見込みだということですが、この見込みが環境条件によるものなのか、今までの管理ルールによるものなのか、はたまた他の何かによるものなのか明白ではありません[1]。このような状態で、魚をより多く効果的に獲ることを可能にするFADsの使用禁止期間を短くするなど管理ルールを弱めることは果たして適切と言えるのでしょうか?
写真5(会場内のグリーンピースの展示デスク)
一人ひとりが海をまもるヒーローになる大切さ
「新鮮で美味しい」という条件は食べ物を選ぶ時、大切なことだと思います。でも、それと同じくらい、魚の資源の持続可能性を考えることも、これからの時代、大切なことだと思いませんか?
お刺身・お寿司・ツナ缶などマグロを食べる時には、「このマグロの魚種は何だろう?」「このマグロはどこで獲られたの?」「資源は回復してこの先も食べ続けられる量があるの?」などと、考えてみることから。
一人ひとりができる形で、海をまもるヒーローになりませんか?
【参考文献】
[1] WCPFC 科学委員会第13回定例会議報告書の第51段落目を参照
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