こんにちは、エネルギー担当の関根です。

4月25日の第71回福井県原子力安全専門委員会でも、重要な議題となったシビアアクシデント対策。4月26日におおい町で開催された住民説明会でも「再稼働は拙速」とのコメントや質問が相次ぎました(グリーンピースからは高田が傍聴)。

関西電力と原子力安全・保安院が行ってきたストレステスト(一次評価)では、シビアアクシデント対策は対象とされていません。原子力安全・保安院が示した暫定的な安全基準でも、政府はシビアアクシデント対応は、実施計画があれば後回しでよいとしてしまいました。

では、1月にストレステストのレビューのために来日したIAEAの専門家との間ではシビアアクシデントについて、どのようなやりとりがあったのか?

グリーンピースは、4月25日、情報開示請求により、IAEAと原子力安全・保安院がIAEA来日中(2012.1.23~31)に行った会議の議事録を入手しました。

IAEAは軍事以外の原子力利用を推進する組織であり、原子力発電に関しても決して十分に厳しい視点をもっているわけではありません。しかしそのIAEAも、入手した議事要旨の中では、シビアアクシデントに至った時の対応(二次評価に相当)を重要視し、何度も質問していたことがわかります。

しかしIAEAの質問に対する原子力安全・保安院の回答は、ストレステストの一次評価は、炉心損傷をともなう大事故(シビアアクシデント)前までであり、大事故になった時のことは対象外だ、というものでした。

また二次評価の時期を問われた関西電力も、具体的な予定さえ答えていませんでした。

今、政府も、関西電力も、シビアアクシデントが起きた時の対策を考えずに、再稼働を進めようとしています。
でも「起きないという想定」で臨むことはもう許されない、というのがフクシマの教訓です。

以下に、議事録の中のやりとりを抜粋します。

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IAEA: 二次評価以降において、(事故の)「緩和」に着目した評価はしないのか、EUにおけるアクシデントマネジメント評価の90%は緩和策に対するものである。

保安院: 日本では、(放射性物質の)閉じ込め機能喪失以降については、防災対策として検討するため、ストレステストのスコープからは外れると考えている。

(1/24SBO LUHS SAM会合議事要旨詳細版より抜粋)

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IAEA:緊急安全対策は、まさにシビアアクシデント対策だと思うが対象となるのか。(中略)

IAEA:緊急安全対策とシビアアクシデント対応の切り分けが難しい。たとえば、中央制御室の居住性、現場へのアクセス性などはストレステストの範疇か。

保安院: ストレステストの一次評価では炉心損傷前までなのでそれらは対象外

(1/24SBO LUHS SAM会合議事要旨詳細版より抜粋)

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IAEA:二次評価の報告書はいつ完成するのか

関西電力:二次評価の準備段階であり二次評価を実施する段階にない

(1/23全体会合議事要旨詳細版より抜粋)

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IAEA:炉心の損傷についての評価というのはどのようになっているのか

関西電力:一次評価のスコープは炉心損傷を回避するということで、炉心冷却をするということである。

(1/23全体会合議事要旨詳細版より抜粋)

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IAEA:IAEAの推奨する方法論として、炉心損傷の後について評価することが重要。

保安院:今回は炉心損傷防止に着目している。二次評価の詳細は決まっていないが、参考としたい。

(1/24SBO LUHS SAM会合議事要旨詳細版より抜粋)

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IAEA:一次評価では、中央制御室の居住性は扱われていない。シビアアクシデント発生後の範囲では、中央制御室の居住性はどのように評価しているのか

保安院:シビアアクシデント発生後は想定していない

(1/27SBO LUHS SAM会合議事要旨詳細版より抜粋)

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原子力安全・保安院から開示された文書

1/23全体会合議事要旨詳細版

1/24SBO LUHS SAM会合議事要旨詳細版

1/24議事要旨詳細版(地震津波会合)

1/27SBO LUHS SAM会合議事要旨詳細版