こんにちは。食と農業チームの土屋です。
みなさんは普段、おいしい、うれしいと感じる、心から満たされる食事をしていますか?忙しさに追われる毎日で、ゆっくり目の前の食事を味わうことや、心から満たされる食事について、考える余裕がなくなっているかもしれません。
千葉県佐倉市でオーガニックのお米作りをしている小川さんは、小学生の時に描いた夢である「小さな生きものがたくさんいる田んぼ」を実現しようとしています。
写真:千葉県佐倉市の農家、小川さん
農家さんにも小さい生きものにも、心地いい田んぼ
小川さんが「佐倉小さい農園」を始めたのは今から7年前。田んぼで一切の農薬と化学肥料を使わない、有機農法でお米と野菜を栽培しています。
田んぼに入ってまず気づくのは、生きものの多さです。いろんな種類のカエル、クモ、トンボ、アメンボ、ミミズや、水を引いている小川から流れ込んだ小魚。そうした虫や小魚を目当てに、ツバメなどの鳥たちが訪れます。
写真:小川さんの田んぼのアカガエル。数が減少しており、千葉県では保護生物に指定されています。
田んぼに入った時の感覚を小川さんは次のように話します。
「心地よさ、気持ちよさ、スーッと力が抜けていくというか、疲れが抜けていく、気が回るっていうんですかね。心地いいんですよね。それってツバメもそうで、餌をとるだけじゃなくて、うちの田んぼは気持ちいいんじゃないかなって、小さい生きものたちにとって。そういうのを小さい生きものたちも感じているし、僕もそれは感じている」
田んぼにたくさん虫が出て、ちゃんとお米はとれるの?
小川さんの話しを聞くと、そう疑問に思うかもしれません。殺虫剤や除草剤、化学肥料もまかない小川さんの田んぼでは、自然のもつ生態系の力を引き出す農法を実践しています。オーガニックのお米作りに大切な、二つのポイントを教えてくれました。
ポイント1. 生態系のバランスをとる
「生態系のバランスがとれていれば、害虫だけ増えるってことはない。稲を食べる害虫がいれば、害虫を食べる虫や鳥もいる、このバランスがとれていれば、それほど稲がダメージを受けることはない」
ポイント2. 豊かな土で丈夫な稲をつくる
「害虫や病気に負けない丈夫な稲をつくることを心がけています。丈夫な稲がどういう風に育つか考えた時に、やはり土。いい土、良い土壌に良い根が張って、丈夫な根が張ることで健全な地上部、茎や葉、そして実りができてくると思うんですね」
土を豊かにしてくれるのは、微生物の働きです。田んぼにたくさんいる生きものたちの排泄物を分解するのも、生きものたちが命尽き土に還っていくよう分解するのも、微生物の仕事です。
すなわち、小さい生きものがたくさんいるということは、土が豊かになっていくこと、そしていい作物が育つことにつながっているのです。
ポジティブな変化が起きはじめた
自然がもつ生態系の力を引き出してお米作りをした結果、小川さんの田んぼの周りには、目に見える形で生きものの数が増えたそうです。昔に比べて激減してしまったホタルも、少しずつ戻ってきています。
小川さんが田んぼをはじめた当初、地域の人々には、大丈夫だろうか?と心配されたり、変なことをしていると思われることもありました。けれど、農薬を使わなくてもお米はできるのだと分かったことで、隣の田んぼの人が農薬の使用をやめたり、オーガニックのお米作りをはじめる農家が少しずつ出てきているそうです。
また、お客さんからは何より「おいしい」という声や「安全・安心なお米を届けてくれてありがとう」といった言葉が聞かれます。アレルギーで苦しんでいる子どものために、小川さんの無農薬のお米と出会えたことを感謝してくれる家族もいるそうです。
写真:オーガニックの給食を出す保育園のお昼時間
そして、オーガニックのお米の良さを、小川さん自身も感じています。
「うちの、本当に質素なごはんと味噌汁と漬物ひとつ。これを食べたときに満たされるんですね。胸がふくらむ、うれしい、おいしいってこういうことだよなって」
私たちお米を食べる人に小川さんが伝えたいこと、それは「まず一回食べてみて、感じてほしい。おいしいな、満たされるなっていう食べものを探して、ちょっと大変になるかもしれないんですけど、そういうのを選んで食べてほしい」
写真:小川さんのお米をつかったおむすび
小川さんが生きものパラダイスをどうしても作りたかった理由
小川さんは小学生時代、いわゆる虫取り少年でした。
近所の田んぼで虫取りに熱中していた小学六年生の時、どうしても見つからない生きものがいて、試行錯誤してもだめだったので、自分の努力が足りないと思い込んでいました。
そんな時、お母さんが新聞記事を見せてくれて、田んぼにいる昆虫のタガメが絶滅危惧種になっていると知り、ショックを受けました。人間の生活排水や農薬によって生育環境が悪化したためです。
そこで小川さんは、自分が大人になって農薬を使わない、タガメやカエルや生きものがいっぱいいる楽園を作ろうと決心したのです。
写真:里芋を掘り起こす小川さん
オーガニックのお米を全国に広めよう
自然にも、地域にも、そして食べる人々にとってもポジティブな変化をもたらすオーガニックのお米作り。
しかし、今の日本のお米作りは、農薬や除草剤をまく慣行栽培が主流です。カメムシが稲穂の汁を吸うとお米に黒い斑点が残り、それが混ざるとお米の買取価格が下がってしまう制度があるため、農家さんは毒性の強いネオニコチノイド系農薬をまき、ミツバチや鳥や田んぼにすむ生きものなどにも悪影響を与えています。
そうした古い制度を変え、小川さんのような農家さんの取り組みを応援して、オーガニックのお米を日本全国に広めていきましょう。
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